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子どもの病気・トラブル

2023/10/16

【医師監修】子どもの腹痛、考えられる原因は?対応方法や病院を受診する判断基準も

【医師監修】子どもの腹痛、考えられる原因は?対応方法や病院を受診する判断基準も

腹痛は、子どもに見られる症状の中で最も多いものの一つです。しかし、子どもはどこがどう痛いのかなど、具体的に説明することが難しいため、保護者のかたも症状の把握や対応に迷いが生じることもあるでしょう。
そこで、東京医科大学教授で小児科がご専門の山中岳先生にお話を伺いました。
子どもが腹痛を訴える際に確認すべきポイントや原因、病院を受診する基準などをご紹介します。

監修者

やまなか がく


子どもの心身の成長に向き合う現場を20年以上経験するドクター。経験に加え、日本小児科学会専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医、日本てんかん学会専門医・指導医、と数多くの認定資格を所持し、日々、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患、頭痛、発達の遅れ、脳性麻痺など、主に神経疾患のお子さまの診察を行う。東京医科大学主任教授としても、次世代の医師の育成に力を入れている。

子どもは痛みの表現がうまくできない。まず確認したいことは

子どもは、腹痛の様子や程度を言葉でうまく説明することができないもの。そのため、言葉だけでなく動作や様子、しぐさなども踏まえて、状態を確認するようにしましょう。乳児と幼児以降で次のポイントをチェックしてみてください。
■乳児の場合
  ●機嫌が悪くないか
  ●母乳やミルクの飲みが悪くないか
  ●激しく泣き続けていないか
まだ言葉を話せない新生児や乳児の場合は、機嫌や飲み具合の悪さが腹痛のサインとなります。また、どんなにあやしたり、オムツを取り替えたりしても激しく泣き続ける場合は、乳児疝痛(せんつう)の場合もあります。
■幼児以降の場合
  ●痛む場所はどこか
  ●食前食後に痛むか
  ●痛みの発生する時間帯はいつか
言葉でのコミュニケーションがとれるようになってくる幼児以降では、痛む場所や痛みが発生する時間帯、痛みがどのくらい続くかなどを確認するようにしてください。
大きくなってくると、ストレスによって自律神経が影響を受け、腹痛が起きることもあります。登校前や新年度の始まる際、長期休みの終わりのタイミングなどで、不安や緊張から腹痛を訴える場合も。腹痛の原因が環境によるものだった場合は、すぐに直そうとするよりも「どうしたの?」「無理しないでね」と声をかけるなど、痛みに寄り添ってあげられるといいですね。

子どもの腹痛の主な原因は?

子どもの腹痛の原因で最も多いのは便秘です。腸の中に便がたまり、硬くなることで、おなかが張って痛みが生じます。
便秘に次いで多いのは、感染性胃腸炎です。感染性胃腸炎の場合は、下痢に伴う腹痛以外にも、嘔吐(おうと)や発熱などが見られます。
便秘、感染性胃腸炎以外については、乳児、幼児以降に分けてご紹介します。
乳幼児
●腸重積(ちょうじゅうせき)
腸重積は、0~2歳の乳幼児に発症することが多い病気で、腸の一部が別の腸の一部にはまり込んでしまうものです。便がたまっておなかが動くと、強い痛みが生じ、火がついたように激しく泣きます。腸と腸がはさまっている影響で、嘔吐したり、出血による血便が出たりすることもあります。

ただし、緊張している際にはおなかが動かないため痛みがひきます。家では激しく泣いていたのに、病院に来たら治まるということも。強い痛みや嘔吐、血便といった特徴がすべてそろわないケースもあり「便秘かな」と見逃すこともあるので注意が必要です。
周期的に不機嫌な状態が続く場合、受診により腸重積が見つかることもあります。

●鼠径(そけい)ヘルニア
鼠径ヘルニアは、足の付け根のあたりから腸などが飛び出してしまう病気です。見た目でわかりやすい病気ではあるものの、おなか周辺を見たりさすったりするだけでは気付かないこともあります。腹痛を訴えた場合には、下着までおろして状態を確認するようにしましょう。

鼠径ヘルニアは、飛び出したり、元の位置に戻ったりをくり返し、痛みを伴うことは少ないものです。ただし、飛び出たままの状態が続く場合は、腸閉塞(ちょうへいそく)や壊死(えし)につながることがあるため注意が必要です。飛び出した部分が硬く腫れていたり、赤くなっていたり、痛がったりする場合は、受診するようにしましょう。
幼児以降
●周期性嘔吐症
発作的に何度も嘔吐を繰り返す症状。嘔吐の前段階として腹痛を訴えることがあります。

●尿路感染
腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱炎(ぼうこうえん)といった尿路感染で腹痛が起こることもあります。便秘の子どもは、そうでない場合に比べてかかりやすいため注意が必要です。

●精巣捻転
男の子の場合は、精巣捻転で腹痛が生じることもあります。精巣捻転とは、精巣の血管がねじれて血液が通わなくなってしまうもの。一般的に陰嚢(いんのう)の激しい痛みが起こるものですが、陰嚢と腹部は位置が近いため腹痛が生じることもあります。

●IgA血管炎
小児で最も頻度の高い血管炎であるIgA血管炎では、紫斑や関節痛に加えて腹痛も主な症状となっています。腹痛を訴える子どもの足まで見ることでポツポツとした紫斑に気付くことがあります。

●虫垂炎
虫垂炎(盲腸)の痛みは、一般的には胃の辺りから徐々に右下腹部の強い痛みへと進行していきます。しかし、子どもの場合は、右下腹部ではなくおなかの別の箇所が痛むこともあり診断が難しいことも。虫垂の腫れが破裂し、腹膜炎になると手術も必要となるため、注意が必要です。

●ストレス
通園や通学の緊張や不安がストレスとなり、腹痛を訴えることもあります。「こういう症状だからストレスが原因だ」と簡単に特定できないため、腹痛として考えられる病気の可能性が否定できた場合は、ストレスがあるとすればどのようなものかを考えられるといいでしょう。

おなかに原因がないことも。腹痛といえども全身を確認

腹痛の原因を見てみると、おなかそのものが原因でなく、鼠径部や血管の炎症などおなか以外に原因が隠れていることもあります。腹痛といえども全身を注意深く確認することが大切です。

子どもの腹痛への対応は?病院を受診したほうがよいのはどんなとき?

腹痛は、よく起こるものであるからこそ、受診したほうがいいか、家で様子を見たほうがいいか迷うことがあるかもしれません。受診の判断基準や、家で様子を見る際の注意点を紹介します。

病院を受診したほうがよいケース

お子さまが腹痛を訴える場合、まずは痛みの程度を見てください。我慢ができないほどの激しい痛みであれば、医療機関を受診しましょう。それ以外にも、次のような場合は受診をおすすめします。
●痛みやおなかの張りがどんどん強くなる
●血便が出る
●体重が減っている
●熱や嘔吐など腹痛以外の症状も見られる
●普段おなかが痛くなる時とは様子が違い、違和感を覚える

すぐに受診しなくてもよいと思われるケース

これまでと同じ様子の腹痛であれば、受診をせずにおなかを休ませて、様子を見るようにしましょう。食事を控えめにしつつも、水分、塩分、糖分はしっかりとるようにしてください。

市販薬などで飲み慣れたものがあれば服用するのもよいですが、下痢止めに関しては注意が必要です。下痢止めは、おなかの動きを止めてしまうため、本来は出すべきウイルスや細菌を体の中にとどめてしまうことにもなりかねないからです。

まとめ

子どもの腹痛は、便秘によるものが最も多いものの、おなか以外にもさまざまな可能性が考えられます。また、乳幼児の場合は痛みの箇所や様子を言葉でうまく説明できるわけではないので、判断に迷ってしまうこともあるでしょう。
一つひとつの可能性を自己判断で行うことは難しいものですが、普段お子さまを見られている保護者のかただからこそ「いつもの腹痛と違う」という違和感が大切なサインとなります。違和感を覚えたら、医療機関に相談をおすすめします。
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