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子どもの病気・トラブル

2023/11/17

【医師監修】おたふく風邪の初期症状は?潜伏期間や予防法を解説

【医師監修】おたふく風邪の初期症状は?潜伏期間や予防法を解説

ムンプスウイルスに感染することで起こるおたふく風邪。感染力が強く、保育園や幼稚園で流行することもあるため、心配される保護者のかたも多いのではないでしょうか。
おたふく風邪の症状や予防法、対策についてご紹介します。

監修者

にへい けんじ


東北大学医学部卒業。東京大学小児科、自治医科大学小児科を経て、 1979年から2001年まで国立小児病院神経科医長、 2001年から2004年まで国立成育医療センター神経内科医長 、2006年から、東京西徳洲会病院小児センター神経・発達部勤務。 小児神経学、発達神経学が専門。

おたふく風邪とは

おたふく風邪は、「流行性耳下腺炎」とも言われるウイルス性感染症です。耳の下にある耳下腺という唾液を分泌する部分が炎症を起こし、腫れが生じます。腫れ以外にも、発熱や頭痛、せき、のどの痛みなどが見られます。
おたふく風邪は非常に感染力が強いのも特徴です。子どもも大人も感染しますが、子どもの感染のほうが多く、保育園や幼稚園など集団生活により、感染が広がることもあります。
基本的には症状が出てから1週間程度で落ち着き、重症化することは少ないものの、まれに髄膜炎(ずいまくえん)などの合併症を引き起こすこともあります。

おたふく風邪の原因は

おたふく風邪の原因は、「ムンプスウイルス」で、主な感染経路は、「飛沫感染」と「接触感染」です。ウイルスが体についただけでは感染しませんが、体内に侵入することで感染します。
「飛沫感染」では、感染者のせきやくしゃみ、会話によって飛び散ったウイルスを含んだ飛沫を鼻や口から吸い込むことで感染します。
「接触感染」では、ウイルスの付着したドアノブや、感染者の手や口に触れた後、自分の口や鼻を触ったりすることで感染します。

おたふく風邪の潜伏期間

おたふく風邪の潜伏期間は2〜3週間で、平均18日前後です。唾液の中にウイルスが含まれるのは、症状が出る1週間ほど前から症状出現後9日ころまで。症状が出る前から感染力を持つため、知らないうちに周りに感染させてしまっていることがあります。保育園や幼稚園といった集団生活で感染が広がってしまうのは、このような背景が関係していると言えるでしょう。

おたふく風邪の初期症状

2〜3週間(平均18日前後)の潜伏期間のあとに見られる初期症状は、発熱や頭痛、のどの痛みといった風邪とよく似た症状に加え、耳の下にある耳下腺(じかせん)の腫れが挙げられます。耳下腺は左右両方とも腫れることが多いですが、片方だけのこともあります。
また、耳下腺だけでなく、顎の下のえらのあたりにある顎下腺(がっかせん)が腫れることもあります。
血液や尿中のアミラーゼという酵素の値が上昇することがありますので、補助診断になります。
通常、おたふく風邪は一度かかると一生免疫があるとされています。
※ 5、6歳の子どもに時に繰り返して耳下腺が腫れることがあり、「反復性耳下腺炎」といわれています。おたふく風邪と判別が必要です。

おたふく風邪の対応法

ムンプスウイルスには、抗生物質など特別な治療薬はありません。そのため、通常の風邪と同様に安静にして、水分補給と睡眠をしっかりとることで回復を待ちましょう。安静にしていれば通常、1〜2週間ほどで回復します。
耳下腺の腫れが痛い場合は、冷やすこともあります。しかし、子どもによっては氷のうを載せることが逆に刺激となって痛いというケースもあるので注意が必要です。痛みが強い場合は、痛み止めを使ってもよいでしょう。
また、耳下腺が腫れている場合は、食べ物を食べたり、口を開けたりするときに痛みが生じることがあります。そのため、食事はなるべく柔らかく、刺激の少ない食べやすいものにするのがよいでしょう。
なお、おたふく風邪は感染症であるため、保育園や幼稚園は欠席するようにしましょう。耳下腺の腫脹から5日を経過し、熱もなく一般状態が良ければ、保育園、幼稚園に登園することができます。この場合、主治医から治癒証明、許可証などが必要なことがありますので、確認してください。

おたふく風邪で考えられる合併症は

おたふく風邪は、自然に回復することが一般的ですが、まれに次のような合併症を発症することがあります。
髄膜炎
おたふく風邪の合併症で最も多いのが髄膜炎です。髄膜炎と聞くだけで、怖いと思われるかもしれませんが、おたふく風邪からの髄膜炎はほぼ無症状で自然治癒するケースが多いです。
難聴
ごくまれにムンプス難聴という難聴を起こすことがあります。耳の片側だけであることが多いものの、両側に難聴が生じることもあります。有効な治療法はなく、長期間にわたって聴力障害を抱えることとなります。
精巣炎
男の子の場合(主に成人)、精巣が腫れて痛む精巣炎(せいそうえん)になることがあります。自然治癒することがほとんどですが、精子を作る働きが弱まり、不妊症になることもあります。

おたふく風邪の予防法、ワクチンについて

おたふく風邪の予防は、通常の風邪と同様に手洗い・うがいが基本です。また、ワクチン接種も非常に有効です。定期接種をしている国ではおたふく風邪の発症者が99%減少(※1)しています。
おたふく風邪ワクチンは、日本では1981年より任意接種ですが、1歳以降から接種することができ、計2回の接種が推奨されています。保育園や幼稚園などの集団生活が始まる前に接種を終えておくことが望ましいため、1歳になったら早めに接種することをおすすめします。
なお、ワクチンの副反応としては接種後10〜14日後の微熱や、耳の下などの腫れが挙げられます。

まとめ&実践TIPS

おたふく風邪は、耳下腺の腫れに特徴があるウイルス性感染症です。特別な治療薬はありませんが、安静にして栄養と睡眠をとれば1週間ほどで自然に治ります。
ただし、感染力が強く、自分が気づかない発症前に感染させてしまうこともあり注意が必要です。知らないうちの感染や、集団生活での感染の広がりを予防する意味でも、ワクチン接種をしておくと安心ですね。
※1 日本小児科学会「知っておきたいワクチン情報」(2018年3月)
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_17otafukukaze.pdf
最近の予防接種情報は、下記厚生労働省「予防接種情報」より確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/index.html
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