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子どもの病気・トラブル

2023/12/21

【医師監修】子どもがご飯を食べない…原因や対処法、保護者のかた自身のケアは

子どもがご飯を食べない…原因や対処法、保護者のかた自身のケアは

子どもがご飯を食べないと心配なものです。せっかく準備したご飯を食べない時には、悲しい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
年齢別に子どもがご飯を食べない原因や対処法について、東京医科大学教授で小児科がご専門の山中岳先生に伺いました。

監修者


子どもの心身の成長に向き合う現場を20年以上経験するドクター。経験に加え、日本小児科学会専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医、日本てんかん学会専門医・指導医、と数多くの認定資格を所持し、日々、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患、頭痛、発達の遅れ、脳性麻痺など、主に神経疾患のお子さまの診察を行う。東京医科大学主任教授としても、次世代の医師の育成に力を入れている。

子どもがご飯を食べない原因とは? 年齢別に解説

乳児

乳児は、離乳食が始まったばかりでご飯を食べることに慣れていないことが原因として挙げられます。母乳やミルクと離乳食は、食感も味も大きく異なります。また、食事の仕方そのものにも慣れていません。そのため、次のような点に違和感を覚えて、ご飯が進まないことがあります。
● スプーンの温度や感触
● お皿とスプーンの当たる音
● 食材の硬さや食感
● 食べ物のにおい
● 味
● モグモグすることや飲み込むことに慣れていない
● 口に食べ物を入れてもらうタイミングが合っていない
● 眠い
まずは食べることに慣れるようにしてあげられるといいですね。

幼児

イヤイヤ期真っただ中の2〜3歳では、イヤイヤ期だからこその次のような原因が考えられます。
● 食べるように言われるのがイヤ
● 自分のタイミングや、やり方で食べたいのにやらせてもらえない
● 自分でやってはみるものの、うまく食べられずにイライラする
イヤイヤ期が過ぎた幼児は、好みがはっきりしてくることや、より活発に遊ぶようになることが食べない理由につながります。次のような点が挙げられるでしょう。
● 好みではない食べ物だから
● 初めて食べる物を怖がっているから
● 量が多いから
● おやつを食べすぎておなかがいっぱいだから
● 食べるよりも遊びたいから
「お菓子は食べるのに、ご飯は食べてくれない」とお悩みの場合は、おやつをたくさん食べすぎてしまっているのかもしれません。食べる量やタイミングを調整してあげましょう。食事の2時間ほど前までには、おやつを食べ終わっているといいですね。

学童期

学童期は、好き嫌いに加えて疲れやストレスで食が進まないことも出てきます。新型コロナウイルスの感染拡大防止で、給食が黙食であることが続いたことで、食事が楽しいものではなくなったという影響も考えられます。
また、体形を気にしてダイエット目的で食べる量を減らす子どももいるでしょう。

急に食欲がなくなった……病気の可能性はある?

いつもは食欲旺盛なお子さまの食欲が急に落ちると「何かの病気にかかったのかな?」と不安になることもあるでしょう。風邪や病気にかかると一般的に食欲が落ちるものですが、食欲が落ちたからといって必ずしも病気というわけではありません。小さな子どもであれば、便秘で食欲が落ちることも少なくありません。食欲以外にも、何か症状が見られないかを観察しましょう。体重減少などが見られる場合は、かかりつけの小児科で相談できると安心ですね。

子どもがご飯を食べない場合の対処法

子どもがご飯を食べない場合の対処法

乳児

乳児は、母乳やミルクからご飯を食べることに慣れていっている段階です。食べづらさを減らしてあげるために、次のような対処をしましょう。
● 食材の硬さを調整
● 離乳食の温度を適温にする
● スプーンの形や大きさをお子さまの口に合うものにする
● 口に運ぶタイミングを調整。飲み込んでから次の一口を与える
● 離乳食の時間を調整。眠い時間に与えない
● 母乳やミルクを与えすぎている場合は、適量にする
乳児は、食べること自体にまだ慣れていないため、食べムラもあるものです。なんとしても食べさせなければ……と気負いすぎず、体重が減っていたり、発達曲線から大きくずれたりしていなければOKととらえてください。1回の食事の量にこだわりすぎず、1日、1週間単位できちんとした食事量がとれているかを確認しましょう。

幼児

離乳食が終わった幼児は、食べ物の好き嫌いもはっきりしてくる時期です。また、離乳食を終えたとはいえ、完全に大人と同じものが食べられるわけではないもの。気付かないうちに、子どもが食べづらいものを出してしまっている可能性もあります。ますます活発になってくる時期なので、食欲よりも遊びたい気持ちが勝ることもあるでしょう。次のように対処していけるといいですね。
● 嫌いな食材は、調理法を工夫する(細かく刻む、好きな味つけにするなど)
● 嫌いな食材を多く使いすぎないようにする
● 食事中は、おもちゃなど遊びたくなるものを視界から片付ける
● 食事中はテレビや動画を消す
● おやつの量や内容、タイミングを適切にする

学童期

学童期は、疲れやストレスがたまったり、体形を気にし始めたりする時期だからこそ、食育が大切になります。食や栄養についての正しい知識を伝えたり、一緒に調理してみたり、食への興味を喚起していきましょう。
● 一緒にメニューを決めて買い物に行く
● 食事を作るのを手伝ってもらう
● 楽しい雰囲気で食事をする

保護者のかたがイライラやストレスをためないために

せっかく準備したご飯を食べないと「なんで食べないの?」「がんばって用意したのに」とストレスがたまることもあるでしょう。忙しいなかで作ったからこそ、徒労感を覚えてしまうこともありますよね。
とはいえ、イライラをぶつけてしまったり、なんとか食べさせようと無理強いしてしまったりすることはないようにしたいもの。楽しいはずの食事の時間が、親子共につらい時間となり、ますます食べないという悪循環になりかねません。
そこで大切なのは、次の2点です。1点目は、1回の食事量で判断するのでなく、1日、1週間のスパンで考えること。「お昼は食べなかったけど、夜はよく食べていたからOK」「食べムラもあったけど、1週間でならすとちゃんと食べられていたからOK」という視点を持つようにしましょう。「子どもは食べないときは食べない」というある種の割り切りも大切です。
2点目は、体重が減ったり、健康状態が悪くなったりしていなければ心配しすぎることはないという認識を持つこと。食べられる量は、子どもによって異なるものです。大人が考える適正量が、子どもにとっては多すぎるということもあるかもしれません。保護者から見れば「もう少し食べてほしいな」と思えても、体重が減ることなく、元気で機嫌良く過ごせていれば大丈夫と構えていられるといいですね。母子父子手帳の成長曲線も参考にしましょう。

まとめ

子どもには好き嫌いをせず、たくさん食べて健康に育ってほしい。そう願いつつも、食べない日があったり、食べムラがあるものです。食材の硬さや味つけ、食べるタイミングなどを工夫しても、食べないときは食べないこともあるでしょう。考えられる対処をしても食べないときは深刻に受け止めすぎず、「今はそういう気分なんだな」ととらえる余裕も持てるといいですね。
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