大矢 幸弘 先生

総合監修:大矢 幸弘 先生

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アレルギー

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現代の子どもの半数はアレルギーを持っている!?

世界的に増え続けているアレルギー性疾患

世界的に増え続けているアレルギー性疾患

 食物アレルギーやぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など、アレルギー症状はさまざまなかたちで現れます。実はアレルギーをもつ人の数は40〜50年くらい前から急増し、現代の子どもの約半数は何らかのアレルギーをもっているとされています。アレルギーは、人によって原因、症状、程度に至るまで多種多様。診断基準が複数あるためデータによって増加率には差が出ますが、どんな方法をとっても増えたことは確かです。

 この40〜50年でアレルギーの患者数が増えてきた原因としては、子どもの育つ生活環境の変化が挙げられます。もともと遺伝的にある種の環境変化に影響を受けやすい人とそうでない人がいて、その遺伝的な要素と環境変化の相互作用からアレルギー症状が起こるのです。アレルギーは遺伝性の疾患ととらえている人も多いのですが、むしろ環境の影響の方が大きく、親がアレルギーなら子どもにも必ず症状が出るというものではなく、逆もまたしかり。ただし、親がアトピー性皮膚炎をもっていると子どももアトピー性皮膚炎に、ぜんそくの親の子どもがぜんそくになど、親子で同じ症状が出やすいという傾向はあります。

過剰な「除去食」に注意

 アレルギーの遺伝性や、親の食事の影響に関しては誤解も多く過剰な食事制限を行ってしまうケースがあります。特に妊娠中の除去食にはアレルギーの発症を予防する効果がないことがわかっています。授乳中の制限についても、アレルギー疾患の予防に効果がある事は実証されていません。「親が卵アレルギーだから子どもも卵アレルギーになる」「卵アレルギーだからとり肉も危険」といった考え方も誤り。卵にもとり肉にも反応が出るという場合もありますが割合としては極めてまれですし、アレルギー体質は遺伝しやすいといっても原因や反応の強さまでが同じというわけではありません。過剰な食事制限は本人にも家族にも大きな負担がかかります。除去食は医師の正確な診断の下で進めていく必要があります。

 また、以前はアトピー性皮膚炎治療のために食事制限が行われていたこともありましたが、今は食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は別の病気として扱うのが普通です。アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方をもっている場合もありますが、食事制限で湿疹(しっしん)を治そうという発想はごく一部の乳児を除けば間違いなのです。もちろん食事内容のバランスが悪く肉ばかり食べていたり、食品添加物をとりすぎていれば、当然体に悪影響がありアレルギー症状も悪化します。最近指摘されている脂肪酸の問題でも、肉より魚の脂をとっている方がアレルギーにはよいとされています。

予防のできる症状も - 変化する治療

 アレルギーの予防や治療は現在も研究が進んでいます。「花粉症」などはっきりした原因のあるアレルギーは、それさえ除去すれば症状を抑えることができるため、比較的対策の立てやすいアレルギー。しかし、アトピー性皮膚炎やぜんそくでは、症状の治癒には複数の対策が必要になります。例えば食べ物のバランスに気を遣いながらダニやハウスダストの少ない環境を整え、そのうえで薬を使うといった具合です。
 半面、薬の進歩は大きく、効果も表れています。ぜんそくは、治療の考え方そのものが発作止めを中心とした対症療法から発作が起こる前に対処する予防へと変わってきています。その結果、患者数は増えていても重症にはならず、入院患者数は劇的に減りました。また、以前は副作用について問題視されていたステロイド剤の使用も近年かなり一般化しています。これは臨床データが増え、研究が進み、安全な使用方法が確立されてきたため。むしろアトピー性皮膚炎なら外用薬、ぜんそくなら吸入薬と、局所的な使用になるので、内服薬に比べると全身への負担はほとんどありません。

 治療のスタートは早ければ早いほど効果的に進められますし、負担も軽減できます。気になる症状があるときは早めに受診し、医師の指導の下で正しく薬を使いましょう。医師の診断に不安が残るときは、セカンドオピニオンを考えてもいいでしょう。日本小児アレルギー学会や日本アレルギー学会のホームページでも情報を調べたり医師の検索ができます。

大矢 幸弘 先生

プロフィール


大矢幸弘

名古屋大学卒業後、名古屋大学小児科、国立名古屋病院小児科を経て、 1995年から国立小児病院アレルギー科、2002年から国立成育医療センターアレルギー科医長として勤務。 小児の喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど小児アレルギーが専門。